波音の回廊
 「清廉!」


 私はガバッと飛び起きた。


 その衝撃で布団はめくれ上がり、脇の点滴が引っかかった台がひっくり返ってしまった。


 「危ない、チューブが外れてしまう!」


 医者と看護師が驚き、元に戻している。


 「セイレンって誰? うわ言でも何度かその名前が」


 「水城島の清廉! 次期当主の!」


 「?」


 両親は顔を見合わせ、不思議そうな顔をしている。


 「ねえお父さん、お母さん。私はどうやってこの病院に運び込まれたの? 私は白い馬に乗っていなかった? 私の他に誰かも一緒に運び込まれなかった!?」


 「水城島……?」


 お医者さんがつぶやいた。


 「瑠璃さんは、幻の島の伝説を知っているんだね。海岸部の住人たちに伝わっていた、地元伝来の言い伝えを」


 「言い伝え?」
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