波音の回廊
 私は後悔した。


 やはりあの時、絶対に清廉の手を離すべきではなかったのだと。


 全ての罪を一身に背負い、荒れ狂う津波の前にその身を投げ出した清廉。


 彼の命と引きかえに、海の神の怒りは収まったようで。


 清廉を飲み込んだ瞬間、津波は急に引いていった……。


 そしていつの日か、罪が許されて生まれ変わることができたならば。


 必ず私とまた巡り会うと誓ってくれた。


 とはいえそんな、計り知れない手段に賭けるくらいなら。


 いっそ私も、清廉と運命を共にすればよかった……。


 どうして清廉は私を助けたのだろう。


 深い海の底へ、共に連れて行ってほしかった。


 生き残った自分を悔やむあまり、私は一晩中泣き続けた。
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