波音の回廊
 ……次の日の午前中、私は無事退院となった。


 いったんログハウスに戻り、一休み。


 それから近所のレストランで、食事。


 ハンバーグ定食を食べた。


 洋風の食事をするのは、久しぶりな気がした。


 それから商店街の和菓子屋に立ち寄り、お土産を購入。


 そして夕方、母と二人でお土産を手に、海沿いのビジネスホテルに向かった。


 夜の海に一心不乱で歩き出した私を助けようとした学生さんは、このホテルに長期滞在中だという。


 「クドウさんっていう、東京から来ている学生さんだって」


 東京の学生?


 お土産を手に急ぐ母の後を続いて歩いたけど、私は心ここにあらずだった。


 胸を去来するのは、清廉との思い出だけ。
< 231 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop