波音の回廊
 「清春」


 「ん?」


 「時々考えるんだけど、私はどうしてあの日別世界に飛ばされたんだろう。私が清廉に出会ったことによって、歴史を悪いほうへ変えちゃったのかな……」


 「どういう意味?」


 「私があの世界に迷い込んだために、少しずつ歴史が変わってしまって清廉の運命も……」


 そして後悔することもある。


 水城島の悲劇を知っていたのに、避けることができなかった。


 私は全てを見殺しにしてしまった……?


 未だに胸が痛む。


 津波襲来の時、もっと頑張っていればさらにたくさんの人たちを救えたんじゃないかな、って。


 罪悪感に似た感情に苛まれる。


 「いくらお前が頑張っても、津波襲来という運命からは逃れられなかっただろ? 限られた中で最善を尽くしたんだから、罪悪感を感じることはない」


 「でも……」


 「もしもお前があの時代に飛ばされてなかったら。清廉はきっと、孤独なまま人生を終えていたんじゃないかな。そんな人生の終わりにお前に巡り会えて、わずかな幸せを手にすることができた。感謝してると思うよ」
< 257 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop