波音の回廊
 「そう……かな……?」


 清春は私を慰めるために、そんなこと言ってるだけだと思ったけれど、


 「感謝しているからこそ、生まれ変わってまた出会いたいと願ったんだろ? だからこうして再びこうして巡り会えたんだ」


 清廉によく似た清春がそう言い切ると、まるで清廉に言われているような錯覚を覚える……。


 その時だった。


 穏やかだった波が突然、二人の足元まで押し寄せた。


 「急に大きなのが来たな」


 清春は驚いて足元を見た。


 すると。


 「おや、綺麗な貝殻が」


 月明かりに照らされた浜辺、清春は貝殻を拾い上げた。


 先ほどの大きな波が運んできたようだ。


 「それは……!」


 かつて清廉が私に拾ってくれた貝殻と同じものだった。


 (ごらん綺麗な貝殻だ。瑠璃の艶やかな髪によく似合う)


 優しいまなざしと穏やかな声が蘇る。


 そして私はまた切なくなる。
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