波音の回廊
 「これも水城島からの、いや清廉からの贈り物なのかな」


 清春がつぶやいた。


 確かにこの浜辺には、謎の漂着物が多く漂着するらしい。


 伝説の水城島から流れ着いたものだ、と地元の人たちも噂している。


 この貝殻も、水城島からたどり着いた?


 もしかして清廉が、私の幸せを願って?


 (……)


 貝殻を握りしめたまま、私はいつしか涙を浮かべていた。


 「瑠璃?」


 清春も戸惑う。


 「これはきっと、清廉からのプレゼント。私が未来に向かって歩き出すようなとの、メッセージを込めた」


 涙を拭い、私は清春に告げた。


 「清廉をがっかりさせたくないから。私、今この世界で幸せになる。そのためには清春、あなたにそばにいてほしい」


 「本当に、後悔しない?」


 「昔のことを嘆くあまり、今の幸せを放棄したら私、逆に後悔する」


 「もう身代わりじゃなくていいんだな」


 「うん。水城清廉じゃなくて久遠清春さんとして、ずっと私と一緒に生きてほしい」


 「瑠璃」


 月明かりの下、強く抱き合った。
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