波音の回廊
 オープンしたてで、まだ新しいログハウス。


 景色は綺麗だし、食べ物は美味しいし、空気は清々しいし、夜空を覆うような星の多さは言葉にできない。


 ただ……。


 私にとって田舎はかなり退屈なものだった。


 生まれてからずっと都会暮らしの私は、自然に囲まれた日々を持て余し始めていた。


 滞在数日目。


 両親は海沿いにある、町の博物館に見学に出かけた。


 当然私も連れて行かれた。


 このあたりは昔、アイヌの人たちの村が栄えていたため、それに関する展示物が多い。


 両親は織物・染物に興味があり、アイヌ文様の織物などの展示物のコーナーから、なかなか動こうとしなかった。


 当然私は退屈になり、辺りをウロウロしはじめた。


 縄文式土器のような土器が展示されているので、それに触れてみたりしていた時。


 「瑠璃(るり)ちゃんには、ちょっと退屈かな?」


 いきなり名を呼ばれ振り返ると、ここの博物館で学芸員をしている、若いお姉さんが立っていた。
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