波音の回廊
 「し、下着なんかじゃないんですけど。これは私の普段着で」


 「そんな格好してる女、見たことねえな。お前、この島の人間ではなさそうだな。どっかから流れ着いた遊女か?」


 「失礼な」


 捕まれた手首を振りほどき、逃げ出そうとしたのだけど。


 逆に背後から抱きかかえられ、口は手で塞がれた。


 「どっから来た女だか知らんが……。この島の女と同じ体をしているかどうか、調べてやろうか?」


 「え……!」


 がっちり抱え込まれているので、、身動きが取れない。


 触れられることに恐怖を感じているのに、逃げられない。


 Tシャツが引っ張られ、肩がはだける。


 一瞬の隙を突いて、ベッドの脇にある置物を手にとって、清明目がけて投げつけようとしたのだけど。


 投げる前に再度手首を捕まれ、力を加えられた。


 痛みに耐えかね、私は手の力を抜いた。


 置物は私の手から離れ、床に落ちて割れてしまった。
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