波音の回廊
 「さて、食事も一段落したところで本題に入るが」


 清廉は切り出した。


 「お前は瑠璃という名前だったな」


 「はい」


 「瑠璃はどこからこの島に来たのだ?」


 「えーと……」


 私は答えに窮した。


 未来から来たようだ、とはとても言えない。


 一番心配だったのは、私が余計な発言をすることによって、この島の歴史を変えてしまうこと。


 いずれ滅亡の運命を背負わされた島なので、私は発言にかなりデリケートになっていた。


 「それが……、よく覚えていなくて……」


 「記憶がないのか」


 私は記憶がないふりをした。


 清廉は半信半疑だったようだけど、表面的には信じているふりをした。


 「ま、こうやって同じ言葉で会話ができているのだから、特に問題はないだろう」


 そう締めくくった。
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