波音の回廊
 それから清廉は、自分のことを話しはじめた。


 清廉は、この島の当主の次男。


 今年19歳。


 私より二つ年上だった。


 本来ならば長男である、一つ年上の兄・清明が次期当主となるべきところを。


 正妻の子である清廉が、身分の低い側室の生まれである兄の清明を差し置いて、次期当主の座が約束されていた。


 「家柄とか、支配者の血だとか……。私にとってはどうでもいいことなのだが」


 清廉は複雑な表情を見せた。


 「清廉さまは、いずれは……」


 「清廉、でいい」


 様、は付けなくていいと言われたものの。


 初対面で、年長の目上の人を呼び捨てにはしにくい。


 「いずれは……、この島の支配者となられる御方なのですね」


 「そういうことになるな」


 だけど、私は知っている。


 清廉は次期当主の座に収まることなく。


 この島は最期の日を迎えることを……。
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