波音の回廊
 ……翌日の夜。


 本来ならば満月である、この夜。


 水城家の館では、毎月満月の夜に家族総出の宴を開催しているという。


 「気が進まないのだが」


 夕方呼ばれたので清廉の部屋に入ると、宴に出席する準備をしていた。


 昨日よりも明るい青の着物を、着流しのような格好で着ている。


 「瑠璃、お前も来るんだ」


 「え? 私、部外者なのに……」


 「同伴は許可されている」


 結局出席することになり、宴会用の衣装に着替えて出直した。


 「この島のどんな娘よりも、瑠璃は島の衣装が似合っている」


 無邪気な笑顔でそう言われたのだけど。


 どうせお世辞だろうと思って、無言で頷くだけにしておいた。


 「さあ、行こう」


 半ば強引に宴会場に連れて行かれた。
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