波音の回廊
 宴会が開催されている大広間は、非常に騒がしい。


 「……想像以上だ」


 宴の間に足を踏み入れた瞬間、清廉は小声で吐き捨てるようにつぶやいた。


 不快な表情を浮かべている。


 私が見た限りにおいても、そこは宴というよりはむしろ、乱痴気騒ぎの場と化していた。


 細いテーブルが四角形に並べられ、水城家の主要人物と思われるメンバーが囲んでいる。


 男性の横には必ず、女がはべっている。


 その姿はまるで、ホステスというか飲み屋の女のごとく。


 「遅いぞ、清廉。次期当主がこんなに遅れてくるとは、周囲に示しがつかない」


 上座(かみざ)から不機嫌そうな声が響いた。


 「遅れて申し訳ありません、父上」


 上座に座る45歳くらいの人物は、清廉の父であり、この島の現当主、すなわち最高権力者だった。
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