波音の回廊
 「……何だ、その女は」


 当主が私の存在に気づき、清廉に尋ねた。


 「私の連れです」


 「連れだと?」


 当主の表情は、あまり面白そうなものではない。


 その横にはべる化粧の濃い女も、私へと疑いのまなざしを向ける。


 そして……。


 「よう、昨日はご苦労だったな。俺よりも次期当主さまがよろしくて、早速乗りかえたのか」


 現当主の右側に座っていた清明が、私に言葉を浴びせた。


 周囲がざわつく。


 次期当主の清廉が、変な尻軽女に引っかかったとみんな誤解しているようだ。


 とはいえこんな所でムキになって反論もしにくく、私は恥ずかしさをこらえてうつむいていた。
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