波音の回廊
 「島?」


 当然私は初耳だった。


 「そう。アイヌ人と本州とを結ぶ中継地点として、重要な役割を担っていたらしいの」


 「え……。小笠原諸島とかですか?」


 「いや。そこまで離れていなかったらしいよ」


 「今は何ていう島なんですか?」


 「今はもう……存在しないの」


 「え?」


 「大津波に島ごと飲み込まれてしまったらしいの」


 「島ごと!?」


 私は一瞬驚いた。


 みつ子さんの話がにわかには信じられなかったから。


 「それって、アトランティス伝説の類似品じゃないんですか」


 「私たち地元民は、日本版アトランティスって呼ぶこともあるけれどね」


 「地元じゃ有名な話なんですか?」


 「そう。たまに波打ち際に、海に沈んだ島の遺物が、流れ着くことがあるの」


 「……」


 「ここの博物館にも、由来不明の展示物がいくつかあるの。それらが漂着物よ」
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