波音の回廊
 ……。


 その後それぞれの部屋に戻った。


 私はこの島に来てから、二日目の夜を迎えていた。


 現在の世界はいったいどうなっているのだろう。


 夜の海に消えた私を捜索するために、海難救助隊とかが出動しているのだろうか。


 両親はまだあきらめず、私の生存を祈っているのだろうか。


 ……ここに来てから、私は元の世界に戻る方法を探すよりも。


 この島を、滅亡の日から救う方法を考えようと強く願い始めていた。


 悪行を重ね、神の怒りを買ったという清廉。


 どう考えてもそんなことをする人には見えなかったし。


 今後、そんな悪人に変貌するとも信じられなかった。


 もしかしたら、あの伝承は間違っているのかもしれない。


 別人のことかもしれない。


 そう思いこむように努めた。


 この島の長い歴史の中には、似たような家族関係を持つ者など、多数存在していたんだろうし。
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