波音の回廊
 次の日。


 清廉は当主の跡取り息子として、島の周囲を視察のために巡るという。


 私も同行することになった。


 この島を救うためには、島に関する情報を少しでも多く手に入れる必要があった。


 だが、一つ大きな問題があった。


 「何だって? 馬に乗れない?」


 私は乗馬の経験どころか、生まれてこの方馬に触ったことすらない。


 清廉は想定外だったようだ。


 「まさか自転車……なんてないよね」


 「ジテンシャ? それは何だ」


 もちろん自転車などこの時代に、まだ存在すらしていない。


 この島では男女問わず、幼い頃に馬の乗り方を習うらしい。


 移動手段は、もちろん馬。


 「仕方ないな。私と一緒に乗ろう」


 清廉は馬上から、私に手を差し伸べた。


 「え……。二人乗りなんて大丈夫?」


 「この白竜(はくりゅう)は丈夫な馬だ。問題ない」


 清廉の前方に横座りで、白竜という名の清廉の愛馬に乗った。
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