波音の回廊
 「綺麗な海……!」


 私は思わず、言葉を漏らした。


 この水城島は、周囲約十数キロの島。


 一日あれば、馬に乗ってゆっくりでも一周できる。


 そしてこの島は、平坦な島だった。


 最も高い場所でも、海抜百メートルもなさそうに見えた。


 海岸線からなだらかな勾配が、島の中央部へと続いている。


 最も標高の高い辺りに、水城家の邸宅が位置している。


 支配している島全域を、見おろせる場所に。


 「この島には、何人くらいの人たちが暮らしているの?」


 「去年の戸籍調査では、千人くらいだった」


 この時代から戸籍調査なんてやっていたんだ、とちょっと関心。


 「ただ、海外からの季節労働者を含めると、さらに五百人くらい増えるかもしれない」
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