波音の回廊
 「あの人たちは?」


 港を散策中。


 浜辺から船で石を沖へと運んでいる労働者の姿を目にした。


 「彼らもまた季節労働者で、沖合いの防波堤の修繕作業中だ」


 「防波堤?」


 「そう。高潮・高波からこの島を守るためには、強固な防波堤が是が非でも必要なんだ」


 それに続いて、清廉は恐ろしい言葉を口にした。


 「……ただ、この島は平坦な島だ。大津波なんてやって来たら、あっという間に飲み込まれてしまうんだろうな。あんな防波堤など無駄で、何もかも木っ端微塵……」


 「そんな話、しちゃだめ!」


 この島の最期(と伝えられている話)を知っている私は、その言葉に笑って応じることなどできなかった。


 ……。


 少し間が空いた。


 「……どうしたんだ? 何を怒っている?」


 「別に怒っては、」


 心の動揺を清廉に知られたくなくて、私は口を閉ざした。
< 58 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop