波音の回廊
 「まあいい。瑠璃は反応が予想できなくて面白い。この島の女たちとは違う」


 あまり気にしてはいなかったようで、清廉は再びにこやかな笑顔を見せた。


 「違うって、どんな風に?」


 私は、約五百年後(と思われる)の日本から来た人間。


 
 違って当然といえば、当然なのだけど。



 「この島の女たちは、皆私に気に入られたくて、ご機嫌取りばかりしている。私の言葉に相槌しか打たない。話をしていてもつまらなかったんだ」


 ……清廉は、水城家の次期当主。


 この狭い島の社会の中で、当主は絶対権力者。


 当然取り入ろうと企んだり、玉の輿を狙う女も多いのだろう。


 気に入られたい一心で、余計なことは何も言わない。


 本音など口にしない。


 清廉と意見を異にするような話題は、極力避ける。


 ……となると当然、会話はつまらない、味気ないものに終始してしまう。
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