波音の回廊
 「悪の大王」の正体が判って、すっきりしたのも束の間。


 それは不幸な史実を決定付けることに他ならないのだった。


 この水城島の最期……それを述べる伝承に登場した家族関係の一致のみならず。


 「悪の大王」の実在も証明されてしまった。


 ということは、あの伝承の信憑性はかなり高まった。


 伝承では、悪の大王が空を彩っている時に、この島は滅んだという。


 ハレー彗星がどれくらいの間地上から観測できるのか、私に予備知識はなかったけど。


 そんな長期間ではなかったような気がする。


 ということはつまり……残された時間はそんなにないかもしれない。


 どうしよう……。


 私は混乱した。


 何をどうするべきなのか分からなくて。
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