波音の回廊
 「この水平線の向こうに、失われた街はあったはずなの」


 私はみつ子さんに連れられ、歩いて数分の海岸線にまで来ていた。


 砂浜に立ち、みつ子さんは沖合いを指差す。


 「その街というか島は、何ていう名前だったのでしょう?」


 「アイヌの古老たちは、“水の城“と呼んでいた」


 「水の城?」


 私は沖合いに、水でできた大きなお城をイメージした。


 実際にどんな姿をしていたのか分からないので、イメージしたのは西洋のお城とか、日本のお城のようなものだった。


 「どれくらいの大きさの島だったんでしょうね」


 「話をまとめると、北海道の天売島(てうりとう)くらい、周囲約12キロメートル程度の島だったらしいの」


 「そんな島が消えちゃったんですか?」


 みつ子さんは頷いた。
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