波音の回廊
 ……夕食の間、清廉とあれこれ会話を楽しんだのだけど。


 頭の片隅には、迫り来る神の怒りに対する恐怖が存在し続けた。


 清廉の人柄を知れば知るほど、疑問に感じる。


 この人が酒池肉林に耽った挙句に、一家を皆殺しにするなど、到底思えない。


 ただ、彼の家族内での微妙な立場が気になった。


 何か引き金になるとすれば、そこかもしれない……。


 それにしても信じられない。


 ハレー彗星は、76年周期で地球に接近する。


 もしかしたら悲劇が起こるのは、76年後かもしれない。


 次の次の世代辺りの話になるのかも。


 私はそう思い込むようにした。


 ……けれどその夜はなかなか寝付けず、満月間近の眩しい月明かりに導かれるかのように、一人庭園に足を踏み入れてみた。
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