波音の回廊
「ありがとう。あとは私が運び込むから、そこに置いておいてくれ」
「かしこまりました」
一件落着と思い、清廉は琵琶を再び奏ではじめた。
だが娘は、微動だにしない。
「どうした? そこに置いたままでよいと申したであろう?」
再び清廉は演奏を止める。
「若様。夏とはいえ夜風は冷とうございます。そろそろお休みになられたほうが」
「心遣いすまぬ。お前も下がってよいぞ」
清廉は琵琶を弾きながら、娘に告げた。
「あの……」
「どうした?」
清廉は背を向けたまま、琵琶の演奏を止めることなく、娘に答える。
「わたくし……。今宵若様のお相手をするようにと」
娘がそう告げた瞬間。
清廉の音色が不意に終わりを告げた。
「かしこまりました」
一件落着と思い、清廉は琵琶を再び奏ではじめた。
だが娘は、微動だにしない。
「どうした? そこに置いたままでよいと申したであろう?」
再び清廉は演奏を止める。
「若様。夏とはいえ夜風は冷とうございます。そろそろお休みになられたほうが」
「心遣いすまぬ。お前も下がってよいぞ」
清廉は琵琶を弾きながら、娘に告げた。
「あの……」
「どうした?」
清廉は背を向けたまま、琵琶の演奏を止めることなく、娘に答える。
「わたくし……。今宵若様のお相手をするようにと」
娘がそう告げた瞬間。
清廉の音色が不意に終わりを告げた。