波音の回廊
 「そんなに大きな島がいきなり消滅するってことは、自然災害でしょうか。地震? 津波? 火山爆発?」


 「伝承によると、海の神がお怒りになって、一夜にして島は海に沈んだっていう話なの」


 「神のお怒り? 昔の人は分からなかっただけで、実はやはり何らかの災害があったのでは」


 「だけど変なのよ。島を一気に壊滅させるくらいの大きな災害ならば、他の地域にも被害は出ているはずでしょ? だけどどれもこれも一致しないの」


 「ならば……。やはり単なるおとぎ話?」


 「……の割には、この辺りの海岸一帯のアイヌの集落全てに、沈んだ都の伝承は伝わっているの」


 「伝承?」


 「ええ。それはどれもこれも、筋が似通っているの」


 みつ子さんは、海岸一帯各地のアイヌ古老たちに伝わった話を聞かせてくれた。
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