波音の回廊
 「ばかげてます」


 私は清明の言葉を遮った。


 「弟に向かってそんな……!? 正気とは思えません」


 「俺は正気だ」


 掴まれた手首の力が強まり、私を引き寄せる。


 「離して!」


 「俺のほうが、清廉なんかよりずっと頼りになると思うけど?」


 しつこく絡まれ、離れない。


 強引に触れられる。


 その時だった。


 「兄上、何をなさっているのです」


 またまた幸いにも、清廉が現れた。


 「清廉!」


 私はようやく清明から逃れ、清廉の元へと駆け寄った。


 「兄上。あなたは本当に、懲りない人ですね」


 清廉は淡々と、同時に怒りのにじんだ口調で清明に告げた。


 「瑠璃にこれ以上無礼な振る舞いをするようでしたら、いくら兄上とはいえ許しません」
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