Cherish!!
Ⅵ
3人は、郁生の後を追う。
「郁!!」
「郁ー!!」
声を限りに叫んでも、郁生には届いていないようだった。
そして足もちぎれんばかりに走っているというのに、郁生に追いつかない。
「やだ、見失っちゃうよ!!」
郁生は最初のスピードよりもはるかに早く移動している。
「い、郁」
「郁、待ってよ。行かないでよ…」
3人の足はとうとう止まってしまった。
「…っくしょう」
(バンッ!!)
心は拳を壁にぶつけた。
早紀は足の力が入らないように、ガクガクとその場に座り込んだ。
「早紀、大丈夫?」
「………」
「…」
3人の中で、言葉はなかった。
何も話せなかった。