君を抱きしめたい

タカが気を使ったつもりだろうか

奈々の友達を連れて僕たち2人を残してどこかに行ってしまった。


いや、気を使ったんじゃないな。

あいつはあいつでよろしくやるためにわざと離れたんだろう…。


2人きりになった動物園のベンチに奈々と並んで座る。

「清春君…今日…つまらなかった?」

「そんなことないよ」

「そう?」

そういえば奈々が俺をキヨと呼ばずに

名前に君付けで呼ぶようになったのは、いつからだろう…。

「私ね…

中学の、時に清春君に彼女ができた時すごいショックだったんだ」

「えっ…?」

「その時、初めて自分の気持ちに気づいたの…

ああ、あたし清春君の事が好きだったんだって」

懐かしむようにどこか淋しげに、ゆっくり話す奈々の言葉を聞いていくうちに

僕も思い出していた。

初めて

まどか姉ちゃんを女として意識したあの日を…



< 31 / 51 >

この作品をシェア

pagetop