Sweet Lover
響哉さんがドアを閉めようとする直前、がつんと女性の脚がドアの中に入り込んだ。

ストッキングにハイヒールがうちの中に入っている。

「……春花(はるか)、それは、女性にあるまじき行為だと思うぞ」

響哉さんは呆れ混じりに言う。


「お言葉ですが、社長。
 私、朝の6時からずっとこちらで待たせていただいてるんですよ?
 お二人仲良く何をされていたのか存じませんがっ」

美人が睨むと迫力三倍増しになるのね。

響哉さんは、そこで初めて目尻を下げて私の肩に手を回した。

「紹介が遅くなった。
 彼女が私のフィアンセだ。
 それはもう、君がここで聞き耳を立てている間、あんなことやこんなことをして、楽しんでいたに決まってるじゃないか」

「……はぁ?」

突拍子も無い発言に、首をかしげたのは私。


朝ごはん食べたり、会話を交わしたりして楽しんだって、はっきり言語化していただかないと、誤解が生じると思うんですけどっ!

けれども、春花さんは眉一つ動かさない。

「それだけお楽しみいただいたなら、もういいじゃないですか。
 とにかく、懸案事項を片付けていただかないと、私も困るんですっ」


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