Sweet Lover
「真朝っ」

鋭い声に、ビクンとした。
……私、寝てた?

「響哉、煩いっ。
 ここはお前の専用室じゃないって何度言わせる気だ?」

冷たく言い捨てるのは、さっき私を助けてくれた人だ、多分。

「頼太、今はそういうことを言ってる場合じゃないだろっ」

「……はいはい。
 お前のお姫様はこっちでぐっすりお休みになってらっしゃいますよ」

半ば棒読みのような言葉の直後、近くのカーテンが動いた音がして、頭に手が触れる。

私は瞼を持ち上げたかったのに、金縛りにでもあったかのように動けなかった。

直後、ふわりと体が宙に浮く。鼻腔をくすぐるのは、心地よい慣れた匂い。
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