Sweet Lover
それが、嫌味なのか謙遜なのか。掴みきれなくて私は曖昧に笑う。

「一緒にアメリカで仕事をされていたんですか?」

「ううん。
 私は日本の会社で働いているの。
 幾度か出張でアメリカに行ったことはあるけれど、基本的にはこちらで仕事をさせてもらってるわ。
 大学時代、社長の後輩だったの」

「じゃあ、パパとママのことも知ってるんですか?」

「ううん。
 先輩たちはあまり、顔を出されなかったから……」

かすかに気まずい空気がダイニングに漂う。

「響哉さんは、どんな学生だったんですか?」

焦った私は慌ててどうでも良い事を聞いてみた。

「そうねー。
 アメリカでプロの俳優になるんだーっていう夢にもえてる向こう見ずな青年って感じかなぁ。
 小さな女の子のことをフィアンセだって断言してみたり。……ああ、もちろん真朝ちゃんのことよ。
 怜悧そうな外見とは裏腹なところに、ギャップがあって惹かれちゃったなー、あの頃は」

春花さんは、私に語るというよりむしろ、ヒトリゴトのようにそう話す。
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