Sweet Lover
私は、ふるふると首を横に振る。

とはいえ、写真の中の幼い私は確かにキスを強要されているようには見えない。
むしろ、どう考えても自分から進んで須藤さんの元にキスをしているようにすら見える。


「そうそう。
 この写真は真一がとったんだよ。
 もっとも、まさか君が俺にキスするなんて思ってもなかったみたいで、とり終わった後酷く狼狽していたけれどね」

ついさっきの出来事を思い出すかのように、須藤さんは軽く言う。

それから、切なそうに瞳を細めた。

「……でも、マーサちゃんはあの事故の後、記憶を失っちゃったんだよね?」

私は、こくりと頷いた。
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