Sweet Lover
焦った私は響哉さんの傍から脱兎の如く逃げだした。

その瞬間。
ものすごい素早さで、ペギーが響哉さんに抱きついて、頬にキスをしたのが目の端に見えた。


……でも。
私は素知らぬふりで、お風呂に向かうことにした。


アメリカではあれは挨拶なんだから。

あまりにも心の中がざらつくので、無理矢理自分にそう言い聞かせてみる。

響哉さんから逃げ出したのは、私なのに、ね。




それにしても、本当にわからないことだらけだわ。

響哉さんは、どうやら間違いなく人気ハリウッドスターみたいだし。

何故か、現役生徒である私さえ知らなかった、うちの高校の理事長室の秘密の階段を知っているし。

幼馴染の梨音とは、敵対しているし。

……そして、実は金髪で青い目の娘が居る……ってこと?

そうなると、カレンって言うハリウッド女優と結婚している……とか!?


ええ、ってことは、全体的に私はだまされていることになるのかしら。

考えを纏めようとした私は、逆に迷路に陥っていく。

全て洗い流そうと、熱めのお湯をざぶりと頭から被った。
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