Sweet Lover
パパと同い年の人が、私のことを「婚約者」にするはず、ないわ。

からかわれていたのよ、やっぱり。

それを、私は真に受けて――。

白馬に乗った王子様の存在を、信じていたわけでもあるまいし。

ある日、突然現れた美形青年が、テレビドラマ並みの甘い言葉を口にするからって、――そして、いくら昔好きだったからって言っても――謎だらけなのに、疑いもせず、いつの間にか、好きになってたなんて、私、本当にどうかしてたわ。

……ばっかみたい。



コンコン

部屋のノックの音には、気づかないふりをしたまま、ドライヤーの音を上げる。

「マーサ」

耳に心地良い、低い声だけど、今は大嫌い。


……ついさっきまで、大好きだったのに。
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