Sweet Lover
「響哉さん、ごめんなさい――」

彼がエンジンをかけて、シートベルトを締める前に、私はぺこりと謝った。

響哉さんはシートベルトを止める手を離し、私に顔を近づける。

「マーサは別に、悪くない。悪くないのに謝る必要なんてない」

響哉さんはきっぱりとそういいきる。

「ペギーの父親が居ないと分かると、マーサはきっと気を遣うだろう? その気遣いがまた、ペギーを苦しめる。そういうことに巻き込ませたくなかったんだ」

そんな、響哉さんの心遣いを私は無駄にしてしまった――。

胸いっぱいに後悔が募る。
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