Sweet Lover
「あ――
 興味本位で不躾な質問をしてすみません。

 僕、キョーヤ・スドーのファンであり、今は記者の仕事をしていまして――」

男は何か言っているけど、ちっとも耳に入ってこない。

「大丈夫――ですか?」

心配そうに手が伸びてきた。
私は思わず立ち上がって後ずさる。

「大丈夫ですから、お構いなく。
 それに、私は二人の――」

後ろから伸びてきた手に唇を覆われた。

……きゃぁあっ。

悲鳴さえ上がらない。

「しー。
 大丈夫だから、ね?
 落ち着いて」

背中からは耳に覚えのある声が響いてくる。

……佐伯先生?

解放された私はゆっくり踵を返し、そこに佐伯先生の姿を認めた。息を切らしてきたのか、肩が上下しているし、長めの黒髪も乱れている。

もっとも、普段の白衣姿でもスーツ姿でもなくて、ジーンズにシャツというカジュアルな姿になってはいるけれど。
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