Sweet Lover
響哉さんは、私に異常がないことを確かめると、ふぅと安堵の息を吐く。

「マーサが謝る必要なんてない。
 あんな事態を招いた俺に責任がある。
 
 カレンと話をするより、マーサの手を掴んでおけば良かった」

言葉通り、響哉さんは私の手をぎゅっと掴んだまま離そうとはしなかった。

「違うの――。
 私が、自信がなかったのがいけなかったの。
 軽率だったって、反省してる」

私が感情のまま、マンションを出たばっかりに色んな人に迷惑をかけてしまった。


「玄関先での反省会はそのくらいにして、何か飲んで落ち着けば?」

先生の声で我に返って、部屋に入る。
ここも、響哉さんのマンションと同じようにまるでモデルルームのように生活臭がなかった。

それでも、生活に必要な調度品は揃えられている。


――別荘、みたいなものなのかな――

でも、生活の基盤はアメリカなんだよね?
響哉さんの謎は深まるばかりだ。

佐伯先生は響哉さんと自分に珈琲を、私にはココアを淹れてくれた。
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