Sweet Lover
珈琲を渡されてもなお、響哉さんは手を離してはくれなくて。

私は仕方がないので左手でココアのカップを受け取った。

視線だけで佐伯先生にSOSを送ってみる。
先生は呆れ顔で肩を竦め、口を開く。

「公園のベンチでお前に迫っていた男は誰だ?」

――え、こんなこと聞かれるならSOSなんて送らなきゃ良かったかも……


ほら。びくり、と、響哉さんの私を掴む圧力が、一瞬強くなっちゃった。

「……記者のオダって名乗ってた。
 多分、私が家を出る直前にうちにインターフォンを鳴らしてきた人だと思うんだけど……
 知らない人よ?」

私はちらりと響哉さんを見上げる。
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