Sweet Lover
「で、そんな見知らぬ男と何の話を?」

「二階堂朝香さんかって聞かれて……」

先生と響哉さんが顔を見合わせた。

「古い映画で見たことがあるって言ってたんだけど。
 ママと共演したこと、あるの?」

「……あるよ」

響哉さんが小さく頷く。

「もちろん、違うって言ったわ。二階堂は亡くなったって伝えたの。
 そしたらあの人、私のことママと響哉さんの子供じゃないかなんて言いだして……。

 ねぇ、私って響哉さんの子供じゃない……よね?」

つい、そんなことを口にしてしまった。


「心配しなくても、真朝ちゃんの顔は真一に似ている――」

佐伯先生がそう言ってくれるのを途中で遮ったのは、響哉さんだった。

「マーサが心配だと言うのなら、DNA検査をしよう」

私の手を掴んでいる熱い手とは正反対の、驚くほど冷たい声で、響哉さんがそう言った。

「佐伯、何があったらできるんだ? 唾液か? それとも髪の毛?」

その冷たい口調は、ひどくイライラしているようにも思えた。

「……響哉さん?」

――やっぱり、今聞くようなことじゃなかった。
  怒らせちゃった、よね?
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