Sweet Lover
「二人のキスシーン、ありました?」

私が夢で見た二人のキスシーンはあまりにも綺麗で。
まるで、映画化ドラマのワンシーンみたいだったから。

もしかしたら……って、思ったの。

「ああ、そうだね。
 あったかも」

「じゃあやっぱり響哉さんってママとキスしたんじゃない」

「……おや。
 お姫様はやきもち妬き?」

「そうじゃないけど。
 ……先生は自分の父親とキスした人と付き合いたいですか?」

ごほ、と、先生がむせる。

「あんまり変なこと想像させるのはやめてくれる?」

「だって仕方がないじゃないですか。
 私にとってはそういう感覚です」

やれやれ、と。
先生は苦そうなため息をひとつついた。

よっぽど嫌なシーンを想像したに違いない。

「確かにキスシーンはあったけど、キスはしてないよ」

「本当に?」

「ああ。
 朝香ちゃんは妊娠中だったし。それに、カメラは真一が持ってるんだぜ。
 面倒な揉め事は避けようと思うのが、監督じゃないか」

なんとなく嘘っぽいんですけど。

「ただ、それっぽく見えるようには撮ったけどね」

ふぅん、と。
私はつい冷たい視線を送ってしまう。
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