Sweet Lover
途端。
キっと、梨音の視線が鋭くなった。

もちろん、チビッコに睨まれたところでどうということもないのだが。

「須藤家を捨てたくせに、気軽にそういう発言するのは止めて下さい」

……別段、家を捨てたわけではないのだが。

「分かった。
 じゃあそうしよう。
 ところで、俺に何の用?」

「もう、真朝の面倒見るの、辞めますっていう宣言に来ました。
 私、普通の友達になりたいんですっ」

梨音の双眸(そうぼう)に涙が浮かんでいる。
そこまで大仰なことをお願いしていたつもりではなかったのだが――。

ただ、真朝のことで何かあったら連絡して欲しいと、不用意にお願いしたばかりに、一人の子供を苦しめ続けていたことに、俺は今の今まで気づかなかった。
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