Sweet Lover
私はゆっくり、毛布から顔を出した。
響哉さんは、意外にも不安と心配で揺れている目で私を見ていて、ドキリとする。

「ごめんね、マーサ」

さっきから、幾度も幾度も耳にした、同じ台詞を口にする。

私はどうして良いか分からずに、視線を逸らしてベッドから抜け出してしまう。

「おや、まだ拗ねてるの?
 お姫様は」

私を見た先生が、薄く笑った。

「違いますっ」

そう言った私の声は、明らかに尖っている。

「ほら、荷物、担任にまとめて持ってきてもらったから、それを持ってお帰り」

いつの間にかそろえてあるカバンを持ってくれたのは、響哉さん。
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