Sweet Lover
私の言葉に響哉さんは目尻を下げる。

「マーサの手料理は、そうだなー。
 結婚した後の楽しみにとっておいてもいいかな?」

唐突過ぎるプロポーズに、私の心臓は高鳴った。
別に、『フィアンセ』という言葉が指し示すことが何かを知らないってわけじゃないんだけど。

……でも。

「……それとも、やっぱりまだ、怒ってる?」

私の返事がないので、響哉さんは赤信号の隙に心配そうに私を見つめた。

「……わかんない」

私は正直な気持ちを口にする。

「駐車場で、梨音と抱き合っている響哉さんを見たときは、もう、すごくショックで……。
 哀しかったの」

響哉さんは私の手を掴むと、私にギアを握らせ、その上からギアを掴んだ。
ドキン、ドキンと心臓が高鳴る。
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