Sweet Lover
「もう、怒ってないもんっ」

私は視線を逸らしてそう言う。
子供っぽいのは分かっているけれど、どうしたら良いのか良く分からない。

響哉さんはそんな私を抱きしめて囁いた。

「怒ってるなら怒ってるって言っていいんだよ。
 ここでは、自分の感情を押し隠す必要なんてない。
 俺はつい、マーサを傷つけてしまうけど――。
 それでも、誰よりも何よりも大事に思ってるから」

響哉さんは、真剣にそう言ってくれた。
本当はもう、それだけで十分って、わかっている自分も居る。

梨音と響哉さんは長い間仲違(たが)いしていたから――。

仲直りするのに、あのくらいのスキンシップも必要だったんだって、わかってあげようとしている私もいる。
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