Sweet Lover
「じゃあ、どうして泣いている私を置いて、アメリカに行っちゃったの?」

「須藤家はどちらかと言うと、当時、アメリカよりヨーロッパで力を持っている家だったから。
 あの力が及ばないところで、一度くらい夢にチャレンジしてみたかったんだ。
 それに、本当はもっと早く帰ってくる予定だったんだ。
 ――あの事故がなければ」

パパとママの、交通事故――?

響哉さんは、一瞬強く唇を噛んだ。
それは、今から何かを言うための決意の表れなのかしら。

そういえば、保健室でその話の結末を聞きそびれた気がする。
辛そうな響哉さんを見ていられなくなって、私が寝てしまったんだ。
折角響哉さんが告白しようとしてくれていたのに。

「どうして、パパとママの事故が響哉さんのせいになるの――?」

「それはね、マーサ」

響哉さんは意を決したように喋り始めた。
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