Sweet Lover
「だから、あの事故も俺のせいじゃないかと思って――」

搾り出す声は、とても痛々しい。

「でも、違ったのよね?」

「そう――あれは、違った――」

「だったら。
 響哉さんが気にやむことないわ。
 大丈――っ」

ふいに、響哉さんが私を腕の中に抱き寄せた。
息もつけなくなるほど、強い力で抱きしめられる。

「痛いっ。
 響哉さん、……苦しい……よ?」

そう言っても、響哉さんは腕の力を緩めてはくれない。

「本当は、あの時一緒にアメリカに連れて行きたかったんだ――。
 マーサの記憶があれば、多少の無理を言ってでも、手元においておきたかった」

私よりずっと、苦しそうな声で響哉さんが言う。

そして、我に返ったように私を抱き寄せる手を緩めてくれた。

「私は、響哉さんに対してどんな態度を――?」

腕の中から顔をあげて、響哉さんの顔を見た。

何かに耐えるような顔をしていた響哉さんは、私を見てようやく、ふわりと笑ってくれた。

「俺が葬儀にかけつけたとき、泣くことも出来ずに、マーサは呆然と座っていた。
 啓二くんに、マーサが泣くことも出来ないと聞いてたまらなくなって。
 抱き寄せたけれど、何の反応もしてくれなかった。
 泣いていいんだよって言っても、首を横にふるばかりで――。
 情けない話、どうしてあげたらいいか、全然分からなかった」
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