Sweet Lover
「俺が彼女を悩ませたって言うのか――」

知らず、唇を噛んでいた。

空になった珈琲カップを俺の手から奪った、頼太が苦笑した。

「俺にはわかる。
 自分の将来を周りに振り回されっぱなしだった自分のことが嫌だった。
 真朝ちゃんを同じ目に合わせたくなくて、その質問をしたってことは」

一呼吸置いて、言葉を続ける。

「だから、それは別にいいんじゃない?
 彼女にとっても、将来のことを考える良いきっかけになったわけだしさ」

「じゃあ、何が言いたい」

もったいぶった言い方に、苛々が募ってくる。

クツクツと、喉の奥で笑う頼太が疎ましくすらある。

もっとも、今更俺がどれほど睨んだところで、それを気にやむような男ではない。

むしろ、いっそう楽しそうに肩を震わせて笑ってやがる。

「天下の須藤響哉も、ついに自分の我が侭を抑える日が来たんだと思うと、可笑しくて仕方がねーんだよ」

芝居なのか。眼鏡を外して涙を拭うという仕草まで見せつけて、派手に笑う。

「お前みたいな冷酷なヤツには、絶対に訪れない瞬間だと思ってたのにな」
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