Sweet Lover
「頼太。
 煩い」

俺は拗ねた少年のように、ぷいと視線を逸らして窓の外を見た。

初夏を思わせる日差しに、目を細める。

「ま、いいじゃない。
 転んでみないと痛いかどうかはわかんないわけだし。
 頑張れば?」

兄ちゃんは応援してるぞー、と。

たった一つしか違わないクセに、頼太は昔のように俺の頭をぐしゃりと無遠慮に撫でやがった。

「うぜえっつーの」

俺はハエでも追うようにそれを振り払い、悪態をつく。

「ずっとそのくらいの態度を貫いて欲しいもんだな」

珈琲カップを洗いながらそう言う。
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