Sweet Lover
「ねぇ、マーサ」

その声は、溶けそうなほどに甘い。

「……なぁに?」

応える私の声もきっと、同じような色を帯びているに違いなかった。

「こんな学校、辞めちゃえば?」

熱く囁かれた言葉は、とんでもない暴論。


「……嫌よっ。
 アメリカに行くまではこっちで勉強するの。
 大丈夫よ、私ちゃんと自分で電車に乗ってここまで来れるもん」

私は焦って早口に言葉を紡ぐ。

二人の喧嘩に巻き込まれて、学校中退なんて、ありえないわ。
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