Sweet Lover
「だって、あの人は私のことを響哉さんとママとの娘だって思ってるんですよ。
 ――だからっ」

私は震えを抑えて言葉を続けた。

「だったら余計に危ないかもよ?
 響哉の娘に近づけば、本人に近づけるって考える輩が現れるかもしれない」

興奮が抑えられない私とは対照的に、先生は冷静に言葉を紡ぐ。
かぁっと頭に血がのぼった。

「じゃあ、私はずっとこれから単独行動禁止ってこと?」

「そこまでは言ってない。
 休日の自由まで奪われたくはないだろう?
 でも、毎日同じ場所を同じ時間に通るのは今は止めた方が無難だって――」

先生はそこまで言うと、中途半端に言葉を切った。

響哉さんの指先が、感情が高ぶって堪(こら)え切れずに溢れてきた私の一筋の涙をそっと拭ったせいかもしれない。
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