Sweet Lover
二の句がつけない私の頭をぽんと叩くと、響哉さんは何もなかったかのようにさくっと起き上がった。

「三十分もすれば朝ごはん出来ると思うから、キッチンにおいで」

じゃあね、と。
私の頭を一度だけ撫でると、振り向きもせずにあっさり部屋から出て行った。

……どうしてかしら。

きゅんと、私の心臓は淋しそうな音を立てている。


もっと傍に居てほしかった?
もっと話をしてほしかった?
もっと抱きしめていてほしかった?


……ま、まさか。
だって、あれだよ?
パパと同い年のオジサンなんだよ?

私は呪文のように言い聞かせてみる、けれど。


その呪文の効力がほとんどないことは、うっすらと分かり始めていた。
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